最近、日本では自治体や厚労省が提供する無料の電話相談やLINE相談が増えてきました。誰でも気軽に利用できるのは素晴らしいことですが、その一方で「心理相談=無料」というイメージが広がり、有料カウンセリングの価値や役割があまり理解されていないように感じます。
実際にカウンセラーとして現場にいると、「無料相談で十分なのでは?」「有料で何が違うの?」という声を聞くことがあります。そして、最近ではAIも進化していますし、AIを心理ケアに取り入れている方も多く見られますが、無料相談やAIとはそもそもの目的や深さが違うものです。
無料相談はいわば応急処置
無料の相談窓口は、心が不安定なときに誰かに聞いてもらう「緊急対応」の役割を担っています。今すぐ気持ちを吐き出したい、一人で抱えるのが限界、そんな時にとても役立つものです。もちろん利用すること自体は悪いことではありませんし、大切なセーフティネットだと思います。
ただし、こういったサービスに関しては、限られた時間・人員で対応しているため、一人ひとりの背景や生い立ちなどに深く入り込み、根本的な問題の解決や深い共感を得られるということは稀なのが現実です。例えるなら、無料相談はケガをしたときの応急処置のようなもので、傷が癒えるまでに必要なリハビリやケアまではカバーしていません。
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有料カウンセリングは長期的な心理サポート
有料カウンセリングの役割は、クライアントの人生や心の課題に長期的に伴走することです。何が苦しさの根っこにあるのか、どんなパターンが繰り返されているのか、少しずつ気づいていけるように一緒に悩みにじっくりと寄り添い考えていきます。
カウンセリングは、信頼関係の中で段階的に心を少しづつ開いて話し、自己理解を深め、課題を整理していく過程です。時間がかかることもありますし、簡単に答えが見つからないこともあります。それでも、長期的に自分自身に向き合うことで、これまでよりも安定した気持ちで過ごせるようになったり、内省ができて頭の中がゆっくり整理できたり、自分なりの対処法が身についたりします。
有料カウンセリングは「贅沢」や「浪費」ではありません。むしろ、自分のこころに対する投資であり、未来の自分のための大切なステップだと思っています。
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日本とアメリカのカウンセリングに対する意識の違い
私自身がアメリカで暮らしていた時の常識では、心理カウンセリングは「有料が当たり前」であり、むしろ心理サポートにお金をかけるのは当然の自己投資だと考えられていました。一部保険が効いても1回数百ドルかかるのが普通で、限られた人しか質の高いカウンセリングにはアクセスできません。それでも多くの人が、自分のメンタルの健康を守るために真剣に取り組みます。
一方、日本は自治体や厚労省が無料の相談サービスを充実させており、誰でも最低限の相談ができる環境は整っています。それ自体は素晴らしいのですが、結果として「心理サポート=無料」というイメージが強くなり、深く長期的な支援にお金をかけるという価値観が浸透していません。その背景には、メンタルヘルスへのスティグマ(負のレッテル貼りによる偏見)の根強さや、心理カウンセリングが医療とは別の「選択肢」として認知されにくい文化的事情もあります。
つまり、アメリカのような国では有料が当然だからこそ「お金を払ってでも自分を大切にする」という姿勢が根付いているのに対し、日本は無料の支援に頼りきりで、長期的な改善を目指す意識が薄れがちです。こうした文化の違いが、カウンセリングの価値に対する認識の差を生んでいるのだと私は感じます。
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これからカウンセリングを受けてみようかなというあなたへ
もちろん、無料相談を否定するつもりはありません。特に厚労省のような公的機関が推奨しているサービスは本当に迅速な支援を必要としている人たちに届く社会が理想です。誰かに話すだけで救われる場面はたくさんありますし、それが必要な時期もあります。私自身、特定の方で「この人には迅速なサポートが必要」と感じた場合は、積極的に公的な無償サポートなどをご紹介させていただくケースも多々あります。
でも、もし「同じ悩みが繰り返される」「もっと根本から向き合ってみたい」と感じるなら、有料カウンセリングという選択肢もある、ということをぜひ知っておいてください。あなたの心に寄り添い、長く支えるサポートがそこにはあります。
私、ルーム718は現在いくつかのプラットフォームにて相談員として活動していますが、こちらのブログ・ホームページを経由して直接カウンセリングを受け付けております。ほかのプラットフォームでは雑というわけではありませんが、私個人が運営するカウンセリングルームでは特に毎回、クライアント様のお話をしっかり記録・記憶し、継続的なサポートをさせていただいております。
もし、少しでも以上のお話しが心に留まり、お話をしてみたいなと思われた方、ぜひ問い合わせフォームよりご相談ください。あなたのペースでじっくりと、あなたの視点に立って一緒にお悩みによりそっていきます。
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