強迫性障害の人が抱える『終わらない不安』について

カウンセリング

40年近く関わってきた同居者との対話から見えてきたこと

私は精神科医ではありません。

この記事は、強迫性障害を抱える同居者と40年近く関わってきた中で、私自身が気づいたことを書いています。

40年という時間をくっついたり離れたりですが、ともに過ごしてきたわけですから、同居者に強迫性障害があることは昔から知っていました。

確認癖があることも知っていましたし、不安が強いことも理解しているつもりでした。

けれど正直に言うと、私はその症状の重さを本当の意味では理解していなかったのだと思います。

最近になって、強迫性障害そのものについて深く話し合う機会がありました。

そこで初めて、私は自分が想像していた以上に、彼の強迫性障害が重度だったことに気づいたのです。

強迫性障害の苦しさは「確認行為」だけではない

強迫性障害というと、

「何度も戸締まりを確認する」

「手を洗い続ける」

そんなイメージを持つ人が多いかもしれません。

もちろん、それも症状のひとつです。

しかし、長年一緒に生活していて私が感じたのは、

強迫性障害の苦しさは確認行為そのものではなく、脳が休まらないことなのではないか

ということでした。

常に考えている。

常に不安を処理している。

常に何かを気にしている。

まるで頭の中で複数のラジオが同時に鳴り続けているような状態です。

SNSとの相性が悪い理由

同居者はSNSをほとんどやりません。

見ることはあっても、自分から発信することはありません。

理由を聞くと、

「人の反応を悪い方向に受け取ってしまうから」

と言います。

誰かの何気ない返信。

短いコメント。

既読だけの反応。

普通なら気にならないようなことでも、

「嫌われたのかもしれない」

「怒っているのかもしれない」

「馬鹿にされたのかもしれない」

と考え始めてしまうのだそうです。

ただし、これは強迫性障害や不安障害の人が必ずSNSを避けるという意味ではありません。

逆にSNSに強く執着してしまう人もいます。

返信を何度も確認する。

人の投稿を延々と見続ける。

検索を繰り返す。

安心したくて見ているのに、結果としてさらに不安になる。

そんな状態に陥る人も少なくありません。

不安が強い人にとってSNSは、安心できる場所にも、不安を増幅させる場所にもなり得るのです。

不安を減らそうとして、さらに不安になる

不安が強い人は、不安を解消しようとします。

安心したい。

確認したい。

答えを知りたい。

そのために情報を集めます。

しかし皮肉なことに、情報を集めれば集めるほど考える材料も増えてしまいます。

すると、

また不安になる。

また確認する。

また考える。

という循環が始まります。

本人は安心したくてやっているのに、結果として脳は休めなくなってしまうのです。

私はここに、強迫性障害や不安障害の大きな苦しさがあるように感じています。

情報量が少ない方が楽なこともある

今回の対話の中で、私が最も印象的だった話があります。

それは、

「情報量が少ない環境の方が楽だった」

という話でした。

以前、同居者はある矯正施設で長期間生活していた時期がありました。

その時の話を聞いていて興味深かったのは、不自由さへの苦しさよりも、安心感の方が大きかったということです。

やることが決まっている。

選択肢が少ない。

考えなくていいことが増える。

人間関係も限定される。

その状況下に置かれて、今までの不安が嘘のようになくなったというのです。

一般論だけでいうと、私たちは自由が多い方が幸せだと考えがちです。

しかし強迫性障害や不安障害の人にとっては、

選択肢の多さそのものが負担になることがあります。

情報が増えるほど考えることが増える。

考えることが増えるほど不安も増える。

そう考えると、とても納得できる話でした。

その場を離れても、頭の中までは離れられない

同居者は感情が爆発しそうになった時、その場から離れるようにしているそうです。

環境調整は彼にとって、非常に良い工夫だと思いました。

確かに刺激のある場所から距離を取ることは大切です。

しかし同時に、

身体はその場を離れられても、

頭の中のモヤモヤまでが解消されるわけではない、という問題があります。

場所を移動しても、

「なんだよあの態度!」
「ムカつく!」
「なんであんなことを言われたんだ!」

という考えは追いかけてきます。

むしろ一人になったことで、その考えによりフォーカスしてしまい、頭の中をぐるぐる回り続けることもあります。

私が提案した6秒ルールの形

そこで私が同居者に提案したのが、6秒ルールです。

これは私が独自に考えたものではありません。

怒りの感情はピークが6秒程度と言われることから、アンガーマネジメントなどでも紹介されている感情を素早くコントロールできる手法です。

もちろん、私自身がその効果を科学的に検証したわけではありません。

ただ、今回同居者と話をする中で、この考え方は強迫性障害や不安障害の人にも応用できるのではないかと感じました。

感情が爆発しそう、不安に押しつぶされそうになった時、

頭の中で秒針をイメージする。

そして秒針がゆっくり進む様子だけに意識を向ける。

1秒。

2秒。

3秒。

4秒。

5秒。

6秒。

怒りを消そうとする必要はありません。

考えないようにする必要もありません。

ただ6秒間だけ、

頭の中で暴れ回っている思考よりも秒針の動きに意識を置くのです。

なぜ秒針なのか

強迫性障害や不安障害の人は、感情が大きく動いた瞬間に大量の思考が発生します。

過去の出来事。

未来への不安。

相手への怒り。

自分への嫌悪感。

様々な考えが一気に押し寄せます。

私には、その状態が脳内でノイズが一斉に鳴り始めるように見えます。

ガサガサガサッと大量の雑音が流れ込み、本人も何を考えているのか分からなくなってしまう。

そこで秒針を使います。

秒針を1秒ずつ追いかける。

今この瞬間だけを見る。

過去でも未来でもなく、

ただ目の前の1秒に意識を向ける。

それは怒りを抑え込む方法ではありません。

私は6秒で怒りや不安が消えるとは思っていません。

ただ、感情や思考に飲み込まれそうになった時、一度そこから距離を取るきっかけにはなるのではないかと思っています。

頭の中で暴走し始めたノイズのスイッチを、一度切る。

そのための時間です。

たった6秒かもしれません。

しかし感情に飲み込まれている時の6秒は意外と長いものです。

その6秒があるだけで、

衝動的に言葉をぶつけるのか、

少し冷静になれるのかが変わることがあります。

最後に

私は40年近く同居者と関わってきました。

それでも今回の対話で初めて見えたことがたくさんありました。

強迫性障害の苦しさは、確認行為だけではありません。

常に考え続けること。

常に不安を処理し続けること。

脳が休まらないこと。

その積み重ねが本人を疲れさせているのかもしれません。

もし強迫性障害や不安障害で苦しんでいる方がいるなら、

不安をなくそうとする前に、

情報を減らしてみる。

考える材料を減らしてみる。

そして今この瞬間に意識を戻してみる。

そんな工夫も役に立つかもしれないと、私は感じています。


私、ルーム718は、

毒親育ち、機能不全家庭、
愛着や発達特性による対人関係の生きづらさ、
恋愛のお悩み、という多くの人が抱える人生の課題を相談者様と整理してきました。

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