母親には数々の毒親エピソードがあります。
その話を始めると一冊の本が書けそうなので(笑)、今回はそのあたりははしょって、母の「特性」についてお話ししたいと思います。
私の母は現在85歳です。
母が若い頃はもちろん、私が中年期にさしかかるくらいまで、一般的に「発達障害」という言葉は聞いたことすらありませんでした。
だから母の世代の人は特に、「天然」「うっかり者」「ちょっと変わった人」で片づけられていた人も少なくなかったのではないかと思います。
でも今になって振り返ると、「あれはADHDのような発達特性だったのかもしれない」と思う出来事が、笑えるものから命の危険を感じたものまで、本当に山ほどあります。
その中でも、子どもの頃の私が今でも忘れられない出来事があります。
「今日、私は死ぬんだ」死を覚悟した母のデスドライブ
ある日、母の運転する車に私を含め確か3人の子供たちが乗っていました。
道路は中央分離帯のある片側2車線。
普通に走っていた、その時です。
母は何を思ったのか、突然ハンドルを切り、そのまま中央分離帯を乗り越えて反対車線へ。
そして驚くべきことに、100メートルほど堂々とそのまま逆走しました。
子どもだった私は何が起きたのか理解できず、「今日、私は死ぬんだ」と本気で思いました。
幸いにも対向車はまだ遠方に連なっており、母は何事もなかったかのように右折して細い道へ入っていきました。
今だったら、ドライブレコーダーを搭載している車や監視カメラが彼方此方にありますから、ネットで拡散されたり、ニュースになっていてもおかしくなかったと思います。
忘れ物は日常茶飯事
もちろん、こんなのは序の口です。
母は、とにかく忘れ物が多い人でした。
日傘、カーディガン、スカーフ……。
出かけるたびに行った先々でいろいろな持ち物、買い物したものをなくしてきていました。
なくしたものすべてをかき集めたら、趣味の洋品店が開けるレベルの忘れ物の数々…。
子どもの頃の私は、そのたびに「なんでそんなに忘れ物するの?」と笑っていましたが、
そこを突っ込むと母は烈火のごとく噛みついてきましたので、いつの日か指摘するのをやめました。
でも今思えば、「うっかり」で済ませられるレベルではありませんでした。
「半分に切ったわよ」←気を利かせたつもり…
そして、私の人生で最も衝撃を受けた、というかいまだに思い出すと怒りが湧いてくる出来事があります。
私は長い間アパレル業界で働いていました。
一時期ラルフ・ローレンの路面店で勤務していたことがあります。
当時、そこで思い切って購入したお気に入りの、純毛でインポートの大判ストールがありました。
安月給の私にとっては決して安い買い物ではなく、清水の舞台から飛び降りるような気持ちで購入した、本当に大切な一枚でした。
ある冬の日、一緒に買い物かなにかに出かけた際、母が「寒い、寒い」と言うので、そのストールを貸してあげました。
その後しばらく私もそのことを忘れていたのですが、ある日ふと思い出して実家を訪ねた時、母に聞きました。
「そういえば、あのストールそろそろ返して。」
すると母は、ごく普通の顔で言いました。
「半分に切ったわよ。」
……え?
一瞬、何を言われたのかわかりませんでした。
母が持ってきたのは、見事に真っ二つにダウンサイズされた、当ラルフ・ローレンのストールでした。
私の頭は一瞬豪雪地帯の冬景色のように真っ白になり言葉を失いました。怒っていいやら、泣いていいやら、複雑な感情が母との数多あるトラウマ体験とともに、メリーゴーランドのように脳内でくるくると廻りました。
「え?ええええ???ねえ、なにやってくれちゃってんの?」と一気に母にまくし立てました。
「だって、これ大きすぎるじゃない。半分にしたらちょうどいいでしょ?」
私の怒りは収まることを知らず、その普通化したハーフサイズマフラーをひったくって無言のまま帰宅。
母にしてみたらむしろ、「使いやすいようにしてあげた」という感覚だったのでしょう。
こういう出来事が、我が家では決して珍しいことではありませんでした。
もちろん、これだけで「母はADHDだった」と断定することはできません。
診断を受けていたわけでもありません。
発達特性があることと、毒親であることは別の問題です。
私は母の行動を擁護したいわけではありませんが、ただ、戦後のどさくさとか多産で子供が多かったなどといった時代背景も重なり、
「現代のように個々の特性を気づかれなかった人がたくさんいた」という事実もまた、知っておく必要があるのではないかと思っています。
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