「本当は人と仲良くしたいのに、近づくと苦しくなる」
「嫌いになったわけじゃないのに、連絡を返せなくなる」
「もう無理だと思って、関係もアカウントも全部消して、最初からやり直したくなる」
もし心当たりがあるなら、それはあなたが冷たい人間だからでも、人付き合いが下手だからでもありません。愛着回避の傾向がある人の多くは、人そのものが嫌いなわけではありません。むしろ傷つくのが怖い。人一倍怖いから、先に距離をとって自分を守ろうとしているのです。
近づくほど、怖くなる理由
実は私自身、今でも多少、回避傾向のクセは残っています。
中学の頃、私は人生初の挫折を迎え、急に虐めに遭うようになりました。
きっかけは、なんとなく仲が良かった3人組の女生徒の一人の存在でした。その子はとても成績優秀でスポーツ万能、クラス委員をやっている子だったのですが、ちょっとした上から目線の言動に、小さな苛立ちが募り最後に沸騰してしまい、クラス中が注目するなか、私が癇癪を起こしてしまったのです。
中学2年のことでした。
多感な時期なので、今考えてもなぜそうなったのかいまだにわかりませんが、その出来事をきっかけに、なぜかクラス中の男子が私を無視するようになったのです。(女子とは普通に話していました。)
一人で悩んで苦しんだ挙句、母に「私、虐めに遭ってる」と打ち明けると、聞いてくれるのかと思いきや、母は面倒くさそうに「虐められる方に原因がある」と、一蹴しました。
これ以来、本当の気持ちは人に話すと嫌がられるものなのかと、学習してしまいました。
感情を出すと、周りを困らせたり、嫌われたりする。やっと助けを求めても、受け止めてもらえないどころか、自分が悪いことにされてしまう。そう覚えた心は、大人になってからも自動的にこう働きます。
相手が優しくしてくれるほど嬉しいはずなのに、どこか落ち着かない。返信しなければと思うほど返せなくなる。会いたい気持ちはあるのに、約束が近づくと逃げたくなる。それは愛情がないのではなく、近さそのものが「また傷つくかもしれない」という警報になってしまうからです。
なぜ「リセット」したくなるのか
人間関係に限らず、仕事やSNS、住む場所まで、全部やめてゼロにしたくなる。いわゆるリセット症候群のような行動も、根っこは同じことが多いです。
関係が深くなると、自分の嫌な部分が見られそうになる。相手をがっかりさせるかもしれない、重いと思われるかもしれない、自由がなくなるかもしれない。その不安が限界に近づくと、「もう終わりにした方が楽だ」と感じてしまうかもしれません。実際に切ってしまうと、一瞬ホッとします。期待されることも、傷つく可能性もなくなるからです。
でも、しばらくすると寂しさや後悔が出てくる。「またやってしまった」「なんで私は安定した人間関係を築けないのかな?」と自分を責めて、次はもっと慎重になって、また近づくのが怖くなる。この繰り返しになってしまうのです。リセットは逃げ癖ではなく、その人なりの精一杯の自衛だった、という見方も大切です。
人付き合いを避けることは、決して悪いことではない
ここで大事なことを言います。傷つくのが怖いから人付き合いを避けてしまう、それは決して悪いことではありません。それは「選択的孤独」という、自分を守るための賢い選択でもあります。
賢い人ほど人と群れない、という考え方もあります。無理に大勢の中にいて疲れ果てるより、自分が落ち着ける距離を選ぶ方が、心はずっと健康でいられます。
孤独と孤立は違うのです。
孤立は、つながりたいのに誰ともつながれず、追い詰められてしまう状態。孤独は、自分で選んで一人の時間を持ち、心を整えている状態です。
だから、一人でいるのが好きだからといって、自分はおかしいんだと責める必要はありません。問題なのは一人でいること自体ではなく、本当は誰かと温かくつながりたいのに、怖さのせいでそれすら諦めて苦しくなってしまう時です。
ドーパミン人間よりも、セロトニン人間でいる
人間関係も、ドーパミン人間であるよりも、セロトニン人間である方がいいのかもしれません。これはあくまで例えですが、ドーパミン的な付き合いというのは、刺激や盛り上がり、運命みたいな高揚感や、頻繁な連絡で「必要とされている」と感じるような、波の激しい付き合いです。楽しい反面、その波が引いた瞬間に一気に冷めてしまったり、「もう無理だ」とリセットしたくなったりしやすい。
セロトニン的な付き合いは、その逆です。会うとホッとする。無理をして自分を大きく見せなくていい。一人でいる時間も、生活のリズムもちゃんと安定している。派手さはないけれど、小さな安心感が静かに積み重なっていく。回避傾向がある人にとって、目指すならこちらの方がずっと合っていると思います。
温かい人間関係は、一気に作らなくていい
回避傾向がある人に必要なのは、「距離をとるな」という我慢ではありません。ゼロか100かではなく、その間の距離で人とつながる練習です。
1.消える前に、一言だけ残す 返信がしんどい時、ブロックや未読のまま消える代わりに、一言だけ送ってみてください。「今ちょっと余裕がなくて、落ち着いたら返信します」「嫌になったわけじゃありません。少し時間がほしいだけです」たったこれだけで関係は切れにくくなりますし、自分も「逃げてしまった」という罪悪感を抱えずに済みます。
2.苦しくなったら、終わらせる前に休む 疲れた、会いたくない、連絡が負担。その感覚が出たら、すぐに「この人とは合わない」と結論を出さなくて大丈夫です。まずは距離を少し空けて休む。1日、3日、1週間。休んでからどう感じるかで判断しても遅くはありません。
3.小さく頼る、小さく見せる。 いきなり深い悩みを打ち明ける必要はありません。「今日ちょっと疲れた」「それ、教えてくれて助かった」そんな小さな弱音や感謝からで十分です。「このくらいなら受け止めてもらえた」という小さな体験が積み重なると、人への警報は少しずつ弱くなっていきます。
4.安心できる人を選ぶ 誰とでも仲良くする必要はありません。あなたのペースを尊重してくれる人、返信が遅くても人格否定をしない人、嫌だと言ったことを無理に踏み越えてこない人。そういう人との関係を少しずつ大切にしていく方が、ずっと現実的です。人と群れないことも、人を選ぶことも、わがままではありません。
5.離れてしまっても、戻っていい 距離をとってしまった後でも、関係は修復できます。「あの時は余裕がなくて返せなかった、ごめんね」遅くなっても、その一言で戻れる関係はあります。完璧に付き合うことより、離れた後に戻れること。その方が、長く続く関係には大切です。
最後に
距離をとってしまう自分を、「だから私はダメなんだ」と責める必要はありません。あなたがそうやって守ってきたものは、傷つきやすい、とても繊細な心です。
温かい人間関係は、無理に人に慣れることでも、逃げなくなることでも、刺激を追いかけ続けることでもありません。休みながら、選びながら、安心できる距離でつながっていくこと。一人でいる時間を大切にしながら、会いたい人には会える。頼りたい時には、少しだけ頼れる。セロトニン的な、静かで安定した安心感を少しずつ育てていく。そんな関係の作り方で大丈夫です。焦らなくていいし、誰かと比べなくてもいいんです。
心理カウンセラー ルーム718として活動しております

コメント